「木材を使った家具のデザインコンペ2016」で入賞したアイディアに見る耳寄りな話

■既成概念は革新を阻む
Living & Design展に合わせて開催されていた日本デザイナー協会が主催する「木材を使った家具のデザインコンペ」の入賞作品展を取材する。なかでも秀逸であったアイディアを紹介したい。
今までの考え方や概念では不要なものが予想外の希少価値を生み、爆発的な結果をもたらすことがある。
これは黒板ではなく「もくばん」である。中心部が黒い杉が稀に抜出されることがあるらしい。
しかし、それは概ね不良材として放置されやがて朽ち果てていく運命にある。
ところがこのアイディアはそんな哀れな運命を辿る邪魔者を使って黒板などを作ると云うアイディアである。
おそらく、たまたま根を張った場所の土壌に豊富な鉄分が含まれていたのだろう。成長の過程で導管を通って吸い上げられた鉄分を含んだ水が木の内部のタンニンと反応して黒くなったのだと思われる。
私はかつてタンニン鉄の発色似ついて久留米高専の応用科学教室と組んで研究したことがある。
その目的は筑後市にある日本一の含鉄泉として知られる船小屋温泉の温泉水を使い家具開発に〓げるためであった。杉材の発色は希少価値として知られる神代(じんだい)杉(すぎ)の色目と酷似していた。
神代(じんだい)杉(すぎ)は長い時間土中に埋もれている間に土中に含まれた鉄分などの物質が浸漬した結果、渋い鼠色を発する。それは希少価値で市場では高額で取引されている。我々の研究は神代(じんだい)杉(すぎ)で起きた現象を人為的にしかも短時間に発生させるという物であった。
その技術を確立することによって価格の低落に苛まれ低迷する大川家具の高級化を図ろうとした。
しかしながら、その技術には酸性に対して極めて脆弱であるという弱点があった。
酸性物が氾濫する現代の社会環境で商品化は困難であった。今もその問題は未解決である。
この「もくばん」アイディアもやがてこの問題に突き当たるだろう。
しかし新製品開発の情報はこうしたニッチに潜んでいる場合が多い。
その情報をただ見逃すのか、そこで立ち止まり先にある物を透視するかでは天と地ほどの差が生じる。
不要な物がデザインに出会う時予想外のbreak throughが生じることがある。看過や廃棄の前にその是非について考えてみることは重要である。
産業の再生には近視眼的な発想ではなく遥か彼方を見通す発想が必要である。ただ切るだけの、あるいは切ることで発生する不安定な価格に期待する現在の構造から切った物にいかに付加価値を付けるかという視点で構造を改革すべきだと思う。
つまり既成概念や習慣から離れて今一度、生業についてあるいはその未来について考えなければいけないと思う。
またそれは何も林業に限ったことではない。
最後に言っておくが黒杉やスポルテットは要らぬ物にあらずデザインのエレメントとしては誠に優である。

関光放浪記第1章より

主催:公益社団法人日本インテリアデザイナー協会
https://medium.com/fraze-craze/compe2016-res-a44309f33444#.iuqwezgxe”