家具産地諸富に学童机椅子の変遷をたずねる

 民主党政権の時代に国は公共施設の木造・木質化目標を掲げた。
 自治体は挙って林業の再生に向けて懸命になったが、その結果は決して一律ではなかった。これまで県内の多くの公共空間を見てきたがその感は否めない。
 そんな中で佐賀市の公共空間の木造・木質化の取り組みは県内では群を抜いている。
 市産杉を使った木製の学童机・椅子の普及も同様に進んでいる。
 この普及率の向上は子供たちに対する情緒的な好影響をはじめ、森林の荒廃を防ぐ一助にもなる。地産地消にもなる。
 特に学童机・椅子の開発に関しては国の目標を達成すべく佐賀市教育委員会をはじめ諸富家具振興協同組合など関わった部署は実におおくの時間と試行錯誤を重ねた。杉は元来柔らかく傷つきやすい。つまり耐久性が低いのだ。ふと一昨年訪れた、福島県の郡山市の国指定の重要文化財である旧安積高校の硬いナラ材を使った机と椅子を思い出す。
 この「柔らかい」を解決するために圧密加工や構造の簡略化など度々試作を重ねた。
 しかも床に傷がつかないようにまた音がしないように脚の下にはフェルトを付けた。
 しかし、たびたび動かされることによって剥がれた。
 すると脚部の一部に彫り込みを入れそこにフェルトを貼った。
 今後はより抵抗を防ぐためにフェルトの形状を円形にするとメーカーさんの話である。
 中々、一筋縄ではいかない。
 「あっちがたてばこっちが立たない」
 逃れることができないプリミティブな難題である。
 つくづく商品開発は難しい。
 杉の「柔らかい」を解決するためだけでもこんなに苦労する訳である。
 他に考えられる課題は強度や重量、コストなど解決は複層的で困難が予想される。
 もとより開発には一つでも多くの意見を反映することが求められる。
100人、いれば100通りの意見がある。「柔らかい」ということを短所とするのもその中の一つであった。一方には、「柔らかい」は素晴らしいという意見もある。


 材料の供給から製作に至るまで多くの人たちの協力によって生まれた諸富製の木製の学童机・椅子が最初に導入されたのは今から10年前の平成19年度に佐賀市立小中一貫校北山校であった。爾来、今日までおよそ3000セットが導入された。そして、諸富家具振興協同組合に問い合わせたところ細部は多少異なるものの現在、生産されているのは概ね写真のものである。なかなかシンプルでモダンである。
 これがこの時代を反映した学童机と椅子である。

関光放浪記第5章より