黒田木材商事株式会社に白濱creative directorを訪ねる

 かつての富士大和森林組合の製材所は現在黒田木材商事株式会社が製材事業およびチップ製造事業を展開している。
 従来の森林組合は木の伐採事業が主で、木材流通販売の内の僅かな機能しか持っていなかったしニーズの動向には疎かった。また、林業が盛んな時代では、それで何一つ問題はなかったわけである。然し、材価低落の事態を受け、森林を頂点にしたあらゆる川下の産業が疲弊崩壊するにいたってその存在理由或いは価値が加速度的に崩落していった。
 平成28年5月富士大和森林組合の製材所は黒田木材商事に譲渡された。
 ニーズの多様化に対応できなくなっていた製材機も一新して競争力のあるものに変えた。
 それを白濱さんはstrike zoneの絞り込みと言った。
 流行しやがて無目的化していった多目的ホールの誤謬(ごびゅう)を思い出す。
 多目的には「どっちつかず」で「中途半端」という弱点がある。
行政にとって公益性は最重点課題である。つまり広く浅くが旨であり、それ故にstrike zoneは限りなく広くなる。悩ましいパラドキシカルな命題であるが、行政の陥りやすい難題である。
 投網漁のようなものである。何でも獲れる代わりに本当に欲しいものはその中の僅かな量を占めるに終わる。何処も満足は得られない。
 ところが今のマーチャンダイジングではstrike zoneを狭め、より精緻(せいち)なコントロールが求められている。それには多くの経験や知的集積が欠かせない。勇気もいる。
その上で、それらの知的集積を普通に使いこなす。何も難しくはなさそうである。
 しかし、今ではその普通が困難な場合が多い。白濱さんの言辞は何も特別ではなく当たり前のことを普段通りにすることの重要性を説いている。市場の変化にflexibleに対応する。とはいえそれは迎合ではなく独自の哲学を背景に筋の通った戦略である。同時に地域密着と適材適所を基本にした戦略でなければならない。
元来、組織には「紺屋の白袴」というか狭小な呪縛に支配されやすい体質がある。
自身の姿を見失う。
故に客観的に外から見た目が正しい場合が多い。
 
 さて、黒田木材商事に譲渡された旧製材所に新しくプレカット工場が建てられている。


 それはATAハイブリッド構法という新しい木造建
築の構法で建てられている。この構法は昨年紹介した石橋建築事務所のBP(Binding Pilling)構法のように継手の代わりに鉄板を使いボルトで結合するというものとは明らかに異なる。
 この構法の開発者はライト兄弟が世界で初めて空を飛んだライトフライヤー号の翼の構造からヒントを得たと聞いた。
セールポイントには「同工法は木の良さを生かしながら、木の弱いところを金属で補う高性能トラス&張弦梁です。

一般流通材のみで 33mの大スパンを可能とする画期的な工法であり、保育園、クリニック、高齢者施設等は勿論のこと、コストが高い大断面集成材でないと対応が難しかった、スーパー・工場・倉庫・作業所・店舗・牛豚舎等の対応も可能となり、木造の可能性が大きく広がりました。」とある。
 私見を挟めば「緊張感のある色気のある構造」に見えた。何故「緊張感」を感じたかは
あまりにも華奢な感じがしたからだろう。
「空気より重いものが飛ぶはずはない」と言われていた時代、ライトフライヤー号の主翼の構造も等しく華奢である。
だが、そのフォルムは美しい。


 この構法の普及は木の可能性を広げ、ひいては木材の利用推進に繋がりそうな予感がする。
林業が面白くなりそうだ。

最後に長時間、取材に応じていただいた白濱creative directorに心より感謝申し上げます。

関光放浪記第4章より