木づかい豆知識 No.4
在来軸組構法で使われる「継手(つぎて)・仕口(しぐち)」について
家づくりでは、外から見えない部分もとても大切です。伝統的な在来軸組構法では、木材同士をつなぎあわせる方法として「継手」と「仕口」が用いられてきました。
木造住宅では柱や梁、桁などを組み上げて構造を造りますが、材木同士を組み合わせるに当たり、各部材にふさわしい刻みを入れます。その刻みが役割によって「継手」または「仕口」と呼ばれています。木には、狂いやすい、ねじれやすいなどそれぞれ個性があります。大工さんがその個性を見抜き、性質にふさわしい刻みを入れることで、木は構造材として本来備えている力を最大限に発揮します。
「継手」:2本の木材の長さ方向に一材化する接合。
(あり継ぎ、かま継ぎ、段継ぎ等)
「仕口」:互いに直交あるいは斜交する接合。
(大入れほぞ差し等)
これらの継手と仕口は、本来は力を部材から部材へ伝えるためのものですが、現在の機能としては、それよりも建て方を円滑にすることの方が大きいといえます。
(参考資料はこちら pdf:160KB)
継手・仕口の特徴
(1) 見え掛かり(外から見える部分)は、単純にする。
(2) 建て方(構造を組んだ)あとの、材の伸びや縮みや反り、ねじれ、ずれなどを
予想し、それに対処できるような工夫がなされている。
(3) 材の断面欠損が、できるかぎり少なくなるよう工夫されている。
(4) 外部からかかる大きな力に抵抗するため、組合せ部分には隙間ができない
ようになっている。
(5) 引き抜きや曲げ、せん断(ずれ)に抵抗できるような形状にしたり、補助部材
を用いて補強するなどの工夫がされている。
「継手」と「仕口」の技術の粋を集めた建造物として、世界遺産に認定されている兵庫県の姫路城が有名です。昭和31年から昭和39年に行われた昭和の大修理では、木組みの種類は天守閣全体で基本形が40種類、改良を施したものを含めると約百種類に及ぶといわれています。木組みの断面はパズルのように複雑であり、修理に関わった大工の最高の匠の技が随所に見られる木組みの博物館と言えるのではないでしょうか。
特に、姫路城の天守閣を支える二本の大柱の内の一つ西大柱は、昭和の大修理で取り換え工事がなされ、建物の根幹となる大柱は強度を保つため長さ25メートル、径1メートルのヒノキの1本の通柱が求められていましたが、木曽の樹齢756年のヒノキを伐採搬出する際に折損事故が起こり、別のところから伐採されたヒノキと二本つなぎにしてほかの部材による補強により強度を保つ工法に変更され、「追っ掛け継ぎ」という技法が用いられました。木組みを合わせる際には、数ミリ単位の調整がなされたと言われています。大きな建物になればなるほど、部材の僅かな誤差でもそこに力が集まり建物自体が耐えきれないからです。
「継手」と「仕口」といった木組みの技術は、日本の木造建築,伝統的な在来軸組構法の根幹をなしており、長年に亘り大工の職人技として磨かれ蓄積されてきたものといえます。
※参考資料
「設計の基本とディテール 木のデザイン図鑑」エクスナレッジ刊行
「神戸新聞(2008.9.28)