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現場レポート:東部林業株式会社 間伐現場の視察

ブログ 2021.07.13

2021年3月24日

林業の作業現場ってどんなの?山の仕事に関わっていない人にとっては未知の世界ですよね。

今回は、なかなか足を踏み入れることのできない山の間伐作業の現場にお邪魔する機会をいただいたので、レポートしたいと思います。担当は林業女子会@さがの堀智子です。



今回視察にお邪魔させていただいたのは、東部林業株式会社さんの現場です。代表の栗原大次郎さんの案内で佐賀と福岡の県境付近の現場へ。標高750mほどの現場につくと、早速遠くから重機の音が・・・。

作業道に敷き詰められた杉葉を踏みしめながら進むと、その先の木々の間に重機が2~3台見えます。聞くと今日の現場には5台もの高性能林業機械が揃っているとか。5台もの機械を一度に見られるなんて!と、初めての経験に林業女子会メンバーは思わずテンションがあがります。(総額1億円を超す代物たちであるという事実に、違った意味でもドキドキしましたが。)

今、栗原さん達が手掛けている作業は、作業道づくり、間伐、造材、集積、出荷作業の部分だそうです。現場は植樹して約40年の国有林およそ40ヘクタールの広さで、4ヶ月間かけて作業をしていくそう。

最初に見せていただいたのは、木を伐りだす為に車や重機が入る作業道(路網:"ろもう")を作っている現場でした。

そこで動いていたのは「フェラーバンチャザウルスロボ」と呼ばれる林業機械。

"ザウルス"...まさに恐竜が進むがごとく、山に最初に分け入って道を通っていく力強い機械でした。木を伐る、握って移動させる、地面を掘る、固める等、1台で何役もこなす機能を持っています。実際に動いている姿を見て、その万能さと迫力に参加者からも思わず、「おお~っ‼」と感嘆の声が。やはり機械のパワーって凄まじいです。

作業道は、ただ道幅に木をなぎ倒すだけでなく、長く使える道として土砂が流れ出ないように配慮して作られているそうです。

①伐った切り株を道の両側に並べて路肩を固める。

②埋土種子を活用し、斜面に草木を生やすため、表層の土を路肩へ移動させる。

③残った土は深い層の土と天地返しを行い、十分に敷き固める。

④雨で路面が侵食されるのを防ぐため、路面に枝葉を敷き詰める。

このような手間がかかる作業道ですが、大切な工程であるため作業班の方も丁寧に作業されていました。

運転手の方に話を聞いていると、足場の悪い山林では、機械が転倒する危険性と常に隣り合わせとか。 しかし、「怖がっていては上手にならないので、機械が傾くことも経験しつつ、バランス感覚を掴んでいくしかない」と話してくださいました。山の仕事の大変さとともに、職員さんのタフさも伝わってきました。

続いて見せていただいたのは、「ハーベスタ」という機械です。立っている木を伐る→掴んだまま枝を払う→指定の長さに切る→集積するという一連の作業を一台で行える、こちらも優れもの。

運転席は個室化されており、計器やバックモニター、冷暖房機能等がついていました。個室と冷暖房...これは夏冬の作業時の快適さが違ってきそうです。

バリバリと音をたてながら、すごい勢いで枝が払われていきます。人力だと何分もかかるであろう作業が、ものの数十秒で...。

その迫力に、思わずみんなの口から「おおおお~!」という声が漏れます。

枝を払った木は、この時点で、木材としての状態の良し悪しを判断され、分類して積み重ねられます。

また、この現場では列状に間伐を行う「列状間伐」が行われており、3列残して1列伐る「3残1伐」という間隔で木が伐られていました。

間伐後、明るくなった森に残った木々は、また数年かけて大きく育ってくれるはずです。

次に、「ハーベスタ」では入り込めないような急な斜面の現場で「スイングヤーダ」という機械が活躍していました。

「スイングヤーダ」にはウィンチがついており、狭く急斜面な場所にある木を引っ張り出すのが得意みたいです。 機械の操作とウィンチの先で作業をする人と、2人1組で作業されていました。

作業道から離れた場所から、ズルズルと木が引っ張り出されていく様子を見つつ、作業班の方の息の合った仕事ぶりにまたまた圧倒される女子会メンバーです。



今回、「神聖な林業の仕事場にお邪魔しているのだから、気を引き締めないと!」と思って臨んだ現場視察でした。 が、林業機械の威力と人の合わせ技を見る度に、思わず心が躍るというか、おお~!と声をあげてしまう自分がいました。

間近で動く機械たちと、それを手足のようにスムーズに動かし、どんどん作業を進めていく作業班の方々の姿がものすごく輝いて見えるんです!みんな羨望の眼差しを向けずにはいられません。

はっきり言って...「カッコイイ!」

そう。その一言につきます!

この現場を見た人は漏れなく「山仕事ってスケールが大きくて、誇らしくて、カッコイイ!」となるのでは?と思ってしまうほどでした。いろんな方にこの知られざる魅力をシェアしないと!そして山の仕事を目指す人が増えてくれるといいのに!...そんな気持ちが沸き起こりました。



それにしても、間伐されていく山林を見ていると、キレイに揃って植えられている様子がよく分かります。伐り出しは機械の力が使われるようになった現在ですが、40年前にこの木々を植えたのは人力。この急傾斜地で、苗木を抱えて上り下りを繰り返し植えた人々がいると思うと、その人力の凄さにも驚かされます。

そして、話を聞き進めていると、なんと代表の栗原さんはこの現場を植林したご本人とか!!

当時はまだ林業の道に入ったばかりの20代だったそう。

40年経って育った木を、植えた方が次の世代の方とともに伐り出す作業をされている様子に、思わず感慨深くなった瞬間でした。

感動しきりの現場視察、最後に「フォワーダ」が登場です!切り揃えられた木材をトラック等に積み込む役割で使われます。

最上部にある座席は前後左右に旋回し、木を掴む部分も自由自在、まさに人の手のようでした。

そして、なんと女子会メンバーも運転席に座らせていただけることに!作業班の方がいつも見ている、地上からとは違う景色を体感させてもらい、光栄ながらも緊張する時間でした。なかなかできない体験をありがとうございます!



全部の現場を振り返ってみると、機械を使った林業には、人力では及ばないスピード感とパワフルさがあることを実感します。それを扱う人も、昔とは身に着けるスキルも感覚も違ってきているのだろうなと感じました。

ただ、変わらないものもあるような気がします。作業班の皆さんとの会話の中で、「次の世代につなげる山づくり」「安全に丁寧な仕事をすること」この言葉が度々聞かれました。

林業のカタチは変わってきていても、良い山を次世代に残したいという意識や責任感など、変わらず大切にされている想いがあるのだと感じました。

しかし、いまや人力で行うには大変な林業の作業量。高性能林業機械を活用することでできる山づくりがあるのだと、改めて認識しました。

ただ、このコストのかかる機械たちが活躍するには、広めの作業現場が必要であることも知りました。

東部林業さんは現在、比較的広い山林で高性能林業機械を使って作業を進めるスタイルで仕事をしていらっしゃるそうです。

私有林が細かく分布している山林では、なかなか広範囲の現場にはなりづらく、作業できるエリアは限られているようです。しかし、会社独自の得意分野を持って、佐賀の山でできる林業のカタチを模索されていらっしゃるのだということを知りました。



やはり、今回のように現場を直接見ることは、本や話で見聞きするのとは違う情報を体感できて、大変有難い機会でした。

改めて、林業が持つ仕事の大変さと重要さと魅力をもっとたくさんの方と共感できらたらという気持ちになりました。

今後も林業女子会の活動を通して、山と林業の魅力を伝える機会を作れたらと思います。

この度、丁寧に対応してくださった東部林業株式会社の皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

貴重な視察の機会を本当にありがとうございました!